森博嗣「S&Mシリーズ」読了

別にミステリを求めて読み続けた訳ではない。各作品に宮部みゆきの作品のような引き込みの強い導入があったわけでもないし、それどころか作品中のどこを読んでも内容の濃度は比較的均一だと思う。序盤も中盤も事件の解決編も、どこが熱いというわけでもなく整然と書かれていて、それが理系ぽいというイメージにつながっているのかもしれない。実際のところは国枝助手が出てこなかったら大して理系でもないと思うけど。犀川助教授の話と西之園萌絵の質問が好きで、どちらかというと「よつばと!」を読むような気分で読んだ。
書き口が理系だからこの明るさを維持できているようにも思える。犀川も萌絵も死体発見直後に冷静に動ける性格だから全編通じてあまり暗さを感じずに軽く読める。これが宮部調だとかなり暗くなってしまい、物語の牽引力にまかせて一気に読むしかない。そういう意味でも通勤時間に読むのに向いている。
短編に登場した小鳥遊練無が魅力的だったので、「四季」の前に「Vシリーズ」も読んでみることにする。

ところで最終作「有限と微小のパン」はずっとライヒ「18人の音楽家のための音楽」を聴きながら読んだため、曲だけ聴いた時にも脳内に真賀田博士が登場するようになった。四季シリーズを読む時にもきっとまた繰り返し聴くことになるだろう。
すべてがFになる (講談社文庫)冷たい密室と博士たち (講談社文庫)笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)詩的私的ジャック (講談社文庫)封印再度 (講談社文庫)まどろみ消去 (講談社文庫)
幻惑の死と使途 (講談社文庫)夏のレプリカ (講談社文庫)今はもうない (講談社文庫)数奇にして模型 (講談社文庫)有限と微小のパン (講談社文庫)地球儀のスライス A SLICE OF TERRESTRIAL GLOBE (講談社文庫)

Music for 18 Musicians

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